- 認知症は治るのでしょうか?
- 残念ながら、現在のところ根本治療薬はありませんが、進行を遅らせることはできます。症状の悪化を防ぐ薬(抗認知症薬)や、リハビリテーション(他ページで述べたコグニサイズなど)があります。
- 早めに治療をした方がいいですか?
- 認知症は早期発見・早期治療によって、高い治療効果が期待できます。早期に治療の開始をすることで、症状を軽くしたり進行を遅らせたりすることができます。
日常生活の中で現れやすい認知症のサイン
- 同じことを何度も言ったり、聞いてくるなど、もの忘れがある
- 財布や通帳など大事なものをしまったのに、どこにしまったか忘れて探し回る
- 冷蔵庫の中にすでに買い置きがあるのに、また同じ物を買ってきて、腐らせてしまう
- 慣れた道でも迷ってしまうことがある
もの忘れがあっても、加齢による通常のもの忘れと、認知症によるもの忘れでは違いがあります。
加齢による通常のもの忘れ
- 体験したことの一部を忘れる。たとえば昨日の晩ご飯のおかずが何だったか忘れる。
- 物忘れの自覚がある。
- 物をしまい忘れても、自分で見つけようと努力する。
- 日常生活への支障はない。
- 基本的にはもの忘れが進行することはない。
認知症によるもの忘れ
- 体験したことのすべてを忘れる。
例えば、ごはんを食べたこと自体を忘れる。そのため、食べたのに、また「食べさせて」と言ってくる。 - 物忘れの自覚がない。
- 自分でしまい込んで見つからない場合、誰かが盗ったなどと、 他人のせいにすることがある。
- 日常生活への支障がある。
- 病状が徐々に進行する。
4種類の認知症の特徴
- アルツハイマー型認知症
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認知症全体の約半数を占める、脳の神経細胞が減少して脳が萎縮していく病気です。症状としては、物忘れから始まることが多く、徐々にゆっくりと、進行します。もの忘れの他に、見当識障害(場所や時間がわからなくなる)や遂行機能障害(ものごとの段取りが立てられない)などの症状が現れます。
症状が進行すると自分が物をどこにしまい込んだのか忘れたのに、誰かが盗ったのではないかと主張する(物盗られ妄想)、徘徊などが出現してきます。その後、急に怒りっぽくなるなど性格の変化が現れます。さらに進行すると、最終的には寝たきりになることが多くなります。治療法
治療法は薬物療法とリハビリテーションが主体です。
薬物療法としては、抗認知症薬(4種類あります)を用います。毎日服用することで、認知症の進行を遅らせることができます。認知症が進行して出現する妄想、暴言、暴力などの症状には、抗精神病薬を用いることもあります。リハビリテーションとしては、当院では、主にコグニサイズと下肢筋力トレーニングを実施しています。抗認知症薬とリハビリテーションを組み合わせることで、認知症の進行を最大限に抑えます。 - 脳血管性認知症
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アルツハイマー型認知症に次いで多く見られる認知症です。脳梗塞などの脳血管障害を起こした後に発症します。脳梗塞などを繰り返すと、アルツハイマー型認知症を違って(徐々にではなく)、階段状に症状が悪化します。原因のほとんどが高血圧、糖尿病、高コレステロール血症などの生活習慣病と言われています。
治療法
脳梗塞の再発予防のため、血圧、血糖やコレステロールを下げたり、血栓が出来にくくなる薬をつかいます。また、アルツハイマー型認知症を合併していることが多いので、抗認知症薬も用います。アルツハイマー型認知症と同様に、リハビリテーションも有効です。
- レビー小体型認知症
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3番目に多い認知症です。レビー小体という異常なタンパク質が神経細胞の中に出現して神経細胞を傷害する病気です。アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症と異なり、もの忘れは中等度以上に進行しないと出現せず、幻視や妄想などの精神症状や、運動障害(手指のふるえや、筋肉の固縮、前屈姿勢など)が先行して現れます。
治療法
アルツハイマー型認知症と同様に抗認知症薬やリハビリテーションが有効です。また、精神症状には抗精神病薬、運動症状には抗パーキンソン病薬を用います。
- 前頭側頭型認知症
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脳の前頭葉や側頭葉に限局した萎縮を特徴とした認知症です。
もの忘れよりも先に、物を盗んだり信号を無視するなどの反社会的行動、道徳観の低下、怒りっぽくなる等の性格変化が現れます。頻度的には少ないので、詳しい説明は割愛します。治療法
症状に対しては、鎮静をかけるために抗精神病薬を用いることがあります。進行すると通院での治療は難しくなり、入院や施設入所による療養に切り替えざるを得なくなることもあります。